《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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鷲谷七菜子『句集 晨鐘』(本阿弥書店)より
2020.10.12
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2004年。
「南風」主宰。第7句集。
寒月のいつのぼりゐし高さかな
声出さぬひと日の果の大嚏
満面に青葉の照りをゆるしけり
青梅雨の大き一枚ガラスかな
机ひろく拭きそれよりの涼夜かな
落椿いまだこの世と見ひらける
葬ひの一部始終を蟇
聞き洩らす一言秋の風過ぎぬ
大き虹あらはれて年行かむとす
底なしの谷へ落花の狂ひかな
西行の齢越えたり春の雁
東風にあげたる後継ぎの男眉
鯉の背のうねり大きく立夏かな
ややおいて初蝉なりき耳すます
白雲のかなた白雲仏生会
初蝉の声のなかなか揃はざる
影の山いつか日の山里神楽
一枚のうごめいてゐる落葉かな
死後もかくあらむ花菜の黄の世界
一村は一つ宗旨に青田風
爽籟に応ふる波のひびきかな
木の葉とぶ日やてのひらの薬粒