《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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田島和生『句集 天つ白山』(角川学芸出版)より
2020.10.15
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2015年。
「雉」主宰。第3句集。
雪撥ぬる笹や先生癒え給へ
山羊繋ぎ一番草を取りゐたる
読始湯川博士の天才論
寄り添つて地に影ひとつ寒雀
バイオリン大ひまはりへ弾く子かな
あふ向きに死にゆく蝉へ蝉時雨
新藁の匂ふ夜明を逝かれしか
あたたかな息が近づく雪女
一ところ雪の窪みて雀の死
初蝶の白に徹してまぎれざる
みどり子の目が開き泰山木の花
ある僧の水割呷る晩夏かな
冬深む古書舗の奥へ蟹歩き
くるぶしを蟻強く咬む爆心地
白日傘平和公園出て開く
四つづつ桃を積み上げ桃売女
秋の日は静座の膝に詩仙堂
凍て土に梅を植ゑむと円を描き
犬と児を小脇に抱へ初電車
二世といふ被爆櫻の赤芽かな
初燕大河を擦つて鳴きゐたる
一稿の終はり一稿雁渡し
渡り鳥つばさ列ねて声もなき
散れるもの籠めて手水の薄氷
つかの間をこの星に酌み春愁ひ
きらきらと鳶の吐きだす蝉の翅