《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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山崎千枝子『句集 素顔』(ウエップ)より
2020.10.25
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2003年。
「燎」主宰。第1句集。
うかと出て春宵の街まだ寒き
車窓より飛び散る紙片夏来たる
夕端居語り部のごと語りをり
ひとことに思ひめぐらし鉄線花
万緑や父の一徹衰へず
白地着て父飄々と入院す
食いまだ叶はぬ父へ団扇風
酒瓶を枕代りに祭果つ
泣き虫の又泣き出しぬ天瓜粉
熱き茶を膝に旅立つ冬の駅
病窓は梢の高さ小鳥来る
黙々と明日の米磨ぐ湯ざめかな
田を植うる朱き鳥居の間際まで
町内に在はすちちはは星月夜
組み替へて夜寒の膝となりにけり
ふらここを漕ぐや齢を置き去りに
冷し酒聴けば生ひ立ち寂しすぎ
汀まで歩み秋意のまた深む
元日の没日揉み込む雑木山
子の部屋の開け放たれて受験終ゆ
一舟は湖心を指しぬ春霞
闇のやや深くなりたる蛍かな
最果の旅へ白靴履き慣らす
人の世の噂は尽きずおでん鍋
ひととせの闇へ雛を戻しけり