《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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豊田都峰『遺句集 林の唄』(東京四季出版)より
2020.12.02
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平成28年。
「京鹿子」主宰。第10句集?
いくすぢも水を流して夏の苑
筆記具は濃い目好みや水澄める
海鳴りのたたみかけくる冬構
海に向く黒板塀も冬構
河豚食べて川すぢの灯にもどりけり
薄氷をすべるは昨夜のなごり風
忘れ角見しより山に晴れつづく
天牛のひげのそよりと森の午後
石仏のひだ朝涼のひとながれ
花蓼や片手をがみに辻地蔵
雪やんで星は神話を組みはじむ
白日を絡めとりたる枯欅
水替へて金魚を空にもどしけり
炎負ふ仏の視野は大みどり
万緑を舟唄にして保津下り
万緑の扉ひらけば水族館
里山のととのつてゆく秋の風
鵙の贄垂れし一肢をなぶる風
半身に月はりつけて冬木立
柏手はお礼ごころに冬うらら
きさらぎのゆび細くして弥勒仏
麦茶飲むのどより雲のわく湖国
木の葉散るその時空の青かりき
比良よりの風のかたちに芦枯るる
着水の白鳥光まみれなる
丘の句碑冬のひなたをひとりじめ
橋越えて隣の村へ日脚伸ぶ
皇子ねむる山むらさきに春夕焼
城址を頂として夕ざくら
滴りに打たれ上手な草ひとつ