《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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戸田和子『句集 もっと遠くへ』(朝日新聞社)より
2020.12.09
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2000年。
「鴫」会員。第1句集。
傾けて桃吸ふ顔を見られをり
売り切れの札に鶯餅の札
春風や乳歯握らせ児を帰す
月の駅恋の電話に隣り合ふ
菊人形まなざし同じ姫と武者
にこにこと誤解してをりチューリップ
逆髪をたてて滝より戻りけり
一斉に牛がふりむく白日傘
うらはらのこと男言ひ萩括る
きつかけのなき噴水の中休み
かき氷とめどなく虚をつみ上げし
なんきんにつまづき昨日冬至なり
夏牡蠣の殻の暗さを打ち重ね
蹴りもして机を畳む夏期講座
団体のセーターの香や廬舎那仏
極月や螺子を外すに二度休み
花片を浴び犀ほどの無表情
胡座静座どちらも苦手更衣
欠航の海にこよなき冬の虹
太々と髪束ねらる弓始
じやじや馬にろまんちすとに蕪汁
わが死後のにほひ大型冷蔵庫
稲の香や捉へがたきは父母の仲
霜晴や五感還せし頬美し
海苔の指飯の指拭く花筵
嚙んでちと賢くなりし実山椒
蚯蚓鳴く線足して誤字つくろへり