《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
藤本安騎生『句集 平野』(角川書店)より
2020.12.13
-
2013年。
「運河」同人。「晨」同人。
第5句集。
一滴の水なき崖の氷柱かな
ずぶ濡れの海女が糶場へ貝運ぶ
駐車料徴収に来るさくら守
白地着て五欲にとほき皃をせり
ゐるゐると岩魚の淵を見て飽かず
茅の輪ぬけ大和国原見霽かす
昼寝などしてをれざるよ暮石の忌
山の日のやはらかく射す寺障子
煤逃げも叶はぬ独り暮しかな
啓蟄を待つ虫のみにあらざるよ
和泉屋の跡形もなき朧かな
錫杖の減りすさまじき峯行者
ひもじさのここち良かりし終戦日
乗込のありし辺りも水涸るる
青嵐映してゐたり道路鏡
夕立を待つのみと言ふ傾斜畠
鮎釣りの腰から崩れ石に坐す
力まかせに芝生を押ふ補虫網
補陀落の海のかがやき秋彼岸