《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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猿橋統流子『句集 鬼嶽』(富士見書房)より
2021.01.01
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昭和63。
「海門」主宰。第3句集。
三輪の神長谷の仏と月分つ
歯を抜きしあとの空洞返り梅雨
師の荼毘を待つ間の蝉をしんと聞く
嫁が来て村賑はへり神の留守
舞ひ上る羽子の紅白塀の上
吊橋に繋がれ眠る山二つ
雪に燭点す末社の猿田彦
喋りすぎし一ト日と思ひ夕端居
恵方道風が袂を膨らます
田を植ゑに出るにも紅をうすくひき
泣かせたることばかり母の墓洗ふ
窓開けておくや無月の夜といふも
子ら塾へゆきてさびしき雪だるま
風船を雲に取られて少女の手
一顆だに採らずて木守柿といふか
恵方など知らず日当る方へ歩く
籠の中に犇くいのち寒卵
踊の灯届かぬ辺りしやがみをり
あやまちて石仏を打ち木の実飛ぶ
廃村や柿に梯子を掛けしまま