《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 | 日記 | 齋藤朝比古『句集 累日』(角川書店)より

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《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記

齋藤朝比古『句集 累日』(角川書店)より

2021.01.08



2013年
「炎環」同人 「豆の木」副代表
第1句集

青空へ巣箱の闇を掛けておく

花火見し目にシャンプーの滲みてをり

まなこ閉ぢ嚏の支度してをりぬ

寒泳の髪乾くまで獣めき

雛の段月へ続いてゐたりけり

ピクニック大き日向の見えてきし

美しき器残れるかき氷

いろいろの蓋あいてゐるキャンプかな

ストライクゾーンを壁に描く晩夏

水音をたどれば母のゐる良夜

いなびかり森が大きくなつてゐる

ブーツ脱ぐバナナの皮を剥くやうに

セーターを脱ぎてセーターあたたかし

同じ木に還つてきたる梅見かな

オリジナルカクテルバレンタインデイ

興行のおほきなバスや桃の花

なにもかも聞こえてゐたる朝寝かな

撫肩に生れて夕立浴びてをり

ハンモックすこしづつ星殖えてきし

日焼して少年のかほ簡潔に

足の指開きて進む西瓜割

木と紙の家に暮して豊の秋

蔓曳きて遠くなりたる通草かな

日溜りのごとくにホットケーキかな

白障子閉ぢて漲るもののあり

歯の穴へ舌行きたがる風邪ごこち

竹馬のはじめの一歩にて落つる

すこしづつ人のかたちに毛糸編む

入口のやうにふらここ吊られけり

敵味方入り乱れたるシャワーかな

ナイターの椅子をまたぎて椅子につく

クロールの飛沫ばかりが大きくて

硬球の縫目のごとき百足虫かな

鬼やんま頭運んできたりけり

くれなゐといふかなしさの茸かな

右中間ひろびろ雁の渡りけり

古民具のやうな良夜となりにけり

黒板に向く三十人小鳥来る

茶の花や家族写真の端は母

闇汁会ふくらめるものおそろしき

風花の風なくなつてしまひけり

梟やゆつくりさめてゆくスープ

戦場のカメラ毛布に包まるる

日向ぼこ日陰になりて終りけり

毛糸編む毛糸説得するごとく

かげろふや街のどこかに水平器

鼻の上に風の道ある昼寝かな

くつつかぬほどに包まれ柏餅

フィットネスジムの大窓さみだるる

白南風や攻守交替小走りに

届きけり男二人と冷蔵庫

まくなぎを殺めぬやうに払ひけり

風鈴を鳴らさぬやうに仕舞ひけり

黙祷といふ八月の棒となる

たくさんの椅子を汚して運動会

空瓶をくぐつてきたる冬日かな

コピー機の光が右へカトレアへ

数へ日の手帳ふつくらしてをりぬ

ストーブに向く先生と生徒かな

神様へじわりじわりと初詣

佳き人と悪しきもの喰ふ朧かな

中古車のおほきな値札つちふれり

腕長くながく使ひて潮干狩

袋掛け脚立にひとりづつ家族

あぢさゐの路地を歩くにすこし邪魔

ほんたうは小屋といふべき海の家

野分晴まなこすうすうしてきたり

冬めくや枕のやうな独逸麺麭

黒板を美して冬休

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