《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記
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藤井明子『句集 雪見障子』(安楽城出版)より
2021.02.16
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2005年。
「馬酔木」同人。第1句集。
誕生日すきな器に苺盛り
鱧寿司や京に育ちて京知らず
かりがねや人は禍福を振り分けに
日のめぐみ風の愁ひに秋深む
百勝の騎手さはやかに手を振りて
厄落し右より付けるイヤリング
月鉾の月を濡らして通り雨
クレヨンの赤よく禿びて聖夜来る
鍵穴をさぐる鈴音月冴ゆる
不器用にたたむ雨傘かの子の忌
火蛾舞ふや駅のベンチに忘れ傘
母逝きし日は白紙なり日記果つ
あや取りの綾の小川の底すくふ
鵜篝の風に華やぐ水の闇
山伏の曳きゆく影のしぐれけり
秋冷を掌にのせ観世音
流氷の蒼き一塊また一塊
花衣脱ぎくにやくにやと座りけり
鳥の来て速達の来て春隣
遠まきに闇の近づく桜かな
指切りの小指ほどきて涼しけれ
水牛の尻に鞭鳴る日の盛り
黄泉路までつづかむ花菜あかりかな
一陣の風に卍の花吹雪
二駅をうつらうつらと梅日和
鶏のびつくり眼黄砂降る
涼しさを巻き上げてゆく理髪灯
爽やかや買はずに帰る売り言葉