《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記
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瀬戸内寂聴『句集 ひとり』(深夜叢書社)
2021.03.12
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2018年。
第一句集。第6回星野立子賞。
柚子湯して逝きたるひとのみなやさし
はるさめかなみだかあてなにじみをり
子を捨てしわれに母の日喪のごとく
身ほとりのものの芽ばかり数へをり
落籍(ひ)かされし技(こ)の噂など四日かな
寂庵に誰のひとすぢ木の葉髪
仮の世の修羅書きすすむ霜夜かな
おもひ出せぬ夢もどかしく蕗の薹
半世紀戦後の春のみな虚し
戦火やみ雛の顔の白さかな
老いし身も白くほのかに柚子湯かな