《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記
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横山美代子『句集 薔薇』(ひこばえ社)より
2021.04.06
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昭和56。
「ひこばえ」同人。第1句集。
動くものわがほかになし墓洗ふ
啓蟄の玉砂利あらく踏みにけり
読みのこす「女の一生」葱きざむ
閉経す野火跡に雨けぶりゐて
天炎えて孤に徹しゐる大鳥居
石舞台炎昼の蝶ながれもす
西日中鴉あくまで一杭に
黒牛の一声ふとく風花す
水鏡いちまいひそめ草茂る
鳶・鴉たたかふを見て夏をはる
追いひつけぬもの大寒の男の歩
篁は風を離さず年ゆけり
春愁の十指組みては解ぐしては
掌に木の実一語を珠とあたためて
みみしひの声の大きさ黄落す
木に石に触れきし指の春愁よ
凭る幹のありて怒涛へ閉づ日傘
人起てば秋風見ゆる椅子ひとつ
誰か死にゆく白日のえごの花
真清水や姥にも白きふくらはぎ
合掌を解きしみじみと秋の中
水甕のみづに空ある神の旅