《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 | 日記 | 金子敦『句集 シーグラス』(ふらんす堂)より

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《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記

金子敦『句集 シーグラス』(ふらんす堂)より

2021.05.13




2021年。
「出航」会員。第6句集。

サ行まだ曖昧な子の御慶かな

正の字の正しく燃えて吉書揚

抱き上げて子猫こんなに軽いとは

不等辺三角形の花筏

飛び入りのブレイクダンス花吹雪

蟻の列マーブルチョコの赤運ぶ

聖火のごとソフトクリーム掲げ来る

ゆく夏の光閉ぢ込めシーグラス

木枯や薬袋の五角形

寒雷やスティック糊の屹立す

蜜柑描きクレヨンの先丸くなる

鯛焼の尾に箒目のやうな筋

冴ゆる夜や三角錐の予約札

白猫のまばたきのごと梅ひらく

滑り台経由ぶらんこ行きの風

ドーナツも薬のひとつ春の風邪

父の日の大言海の重さかな

歯にちよんと青海苔付いて浴衣の子

ノックして応答の無き西瓜かな

ひぐらしや今日の余りのやうな風

つんつんと台風つつく予報官

セーターの胸にトナカイ行進す

さよならのらが白息となつてしまふ

上段の構へのままに枯蟷螂

げんこつで笑窪を作り雪だるま

馬小屋の藁は本物聖夜劇

湯豆腐の自らリズムとりはじむ

アカペラで歌ひ出したる雛の間

一ノ一と書かれしバケツ朝桜

でで虫はしろがねいろの全音符

ワインもう一杯といふ生身魂

露の世のスマートフォンの重さかな

ポッキーをグラスに挿して月を待つ

大根の端にちよろんとダリの髭

賛成も反対もせぬ海鼠かな

ぬかるみは一枚の画布落椿

ゴージャスな指輪の並ぶ夜店かな

おくるみの中の赤子のやうに桃

ひざまづき挿してもらひぬ赤い羽根

白鳥も白鳥守も白き息

化膿止め塗りたるバレンタインの日

クレヨンのぽくんと折れて目借時

電柱の直立不動大夕焼

ひと房のバナナ熟れゆく美術室

下闇を出て黒猫に戻りけり

モビールのやうな家系図ちちろ鳴く

ドミノ置くひとつひとつに秋の翳

刈田より見ゆる剃刀ほどの海

満面に笑みをたたへて捨て案山子

大根を抜き二丁目に残る穴

オムライスの旗は靡かず七五三

小春日や筆塚の穂のふつくらと

木も草も吾もゆつくり枯れはじむ

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