《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 | 日記 | 近藤陽子句集『なづな粥』(文學の森)より

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《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記

近藤陽子句集『なづな粥』(文學の森)より

2021.05.24



令和2。
「未来図」同人。第2句集。

水涼ししばらく知者の貌でゐる

夏逝くやマルクス全集売り払ひ

大寒の闇が鼎のごとく座す

ためらはず恋猫となる夕月夜

麦秋やかすかに妬む人の才

くちなしや曲つてみたき曲り角

梅雨の音聴きすぎし身の闇深し

時折は運命論者毛虫焼く

水羊羹ばかり馳走になる日かな

ギター抱き少女驟雨の中走る

合宿のざつと重ねし夏布団

酔芙蓉書に倦みてより午後長し

肩越しに寝待月見て別れけり

たましひのあはあはとゆく薄原

秋風や寝転んで手の置き処

予備校の黒板長き薄暑かな

紙魚走る江戸川乱歩怪奇譚

秋水の傍らに耳聡くゐる

冬濤を見に来てここが行き止まり

残業の手のみな止まる大夕焼

穏やかな人に苛立つ薄暑かな

父の掌にのせる薬や遠花火

いま虹の輪の中にある母校かな

生身魂上座に忘れられたまふ

天高くして綱引きの綱の張り

冬鷗朝弥撒の人戻る頃

畳替して深々と眠るなり

違へずに咲く理学部の寒桜

教室のバケツをかぶる雪だるま

饂飩屋の相席となる遍路かな

少年に少女追いひつく青嵐

鈍行の窓にあふるる梅雨の海

浮世絵の女のごとき素足かな

運動会救護テントに早や男子

少女跳ぶ野分の朝の潦

パンとチーズ買ふ間の釣瓶落しかな

花満ちて塞ぎの虫の出る気配

魂離(あくが)るるとは初蝶の飛ぶかたち

うつすらと口開け眠る藤の頃

読むつもりなきバイブルの黴払ふ

灯火親しむ左手は猫に貸し

手袋を脱いで与ふる手となりぬ

たまさかにもの言ふ猫と冬籠

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