《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記
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杉浦圭佑『句集 異地』(現代俳句協会)より
2021.05.26
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令和3。
「草樹」会員。第1句集。
女より舌を引きだす朧月
滝を見し者より順に声あぐる
読むうちに字の崩れゆく夏見舞
テーブルがただ大きくて夜の長し
歩くうち日の当り出す一葉忌
右向いて左を探すかたつむり
のどおくに五臓ひろがる天の川
猪の腹裂く青空を一度見て
男根を携えてゆく火の祭
どの顔も見せぬまま雛流れおり
用終えて明日が祭の町を去る
濁りても透き通りても夏の川
壁という壁は本棚雪催
直角に暑し烏丸丸太町
若冲の大丸に寄る西日かな
真鰯の魚群のままに振り返る
十字路を重ねて京の寒さかな
ふぐの身に透けて伊万里の鳥や花
天の川水をこぼさぬように立つ
毛布嚙むガラスケースの中の犬
宇宙論おでんのからし縦にのび
ドアノブのまわりやすくて冬の葬
骸骨につづく歯並び沢庵嚙む
父母の存命中の桜かな