《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記
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和田ナラエ『句集 良夜』(青磁社)より
2021.06.05
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2004年。
「撫子」同人。第1句集。
子より受く汗の重さのユニフォーム
短日や忘れし文字はかな書に
着ぶくれて笑まへる母が夢枕
花柊終生母は粧はず
とむらひの後木蓮の風ばかり
山桜朝日夕日のさすところ
白南風や拭いて位牌のうらおもて
平城山を布引くごとく鳥渡る
枇杷の花又ひとり村はなれゆく
忘年の雨本降りとなりにけり
鑑真廟まで藪椿玉つばき
豌豆の花おのづから寺の径
突く杖のいつより破調鳥雲に
鴇色の日の沈みゆく虚子忌かな
身ほとりにしづけさ戻る余花の雨
飛石の歩巾にかなふ良夜かな
蛇笏忌の満月降りてくるやうな
耳冷ゆるまで潮騒に貝拾ふ
遠く来て湖北の低きしぐれ虹
焼いてゐる寒鮒になほ藻の匂ひ
人に白髪冬山に湯のけむり
乗る舟の歩板一枚今朝の冬