《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記
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中村多阿子『句集 みづうみ』(東洋文化社)より
2021.06.17
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1998年。
「橡」同人。第1句集。
横断路厚着の老にすがらるる
修二会果つ良辯杉に星もどり
啄木鳥や釘一本の荘の鍵
亡き犬に似しが花野をよぎりけり
星涼し山羊いつまでも草の上
朝市や言ひ値くづさぬ息白し
風に耐へ人に耐へゐるさくらかな
大やんま捕へて兄の威を保つ
霧濡れの鼻のか黒きとから山羊
鷲放つのみ知床の山眠り
凍鶴の踊りを待てり吾も凍てて
泊船に乗り移りしか雪女郎
摩周湖や幽かにはしる雪解靄
恐山地獄極楽しぐれけり
老ゆるほど学ぶもの増ゆ文化の日
鉾建の始まりますえと一筆箋
亀鳴けり医師に長寿を約されて
米どころ酒どころまた吹雪けり
亀鳴くや老ら肩書なく集ひ
一条の機内の燈下親しめり