《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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森谷彰『句集 プーさんの瞳』(ふらんす堂)より
2021.09.28
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2006年。
「銀化」同人。第1句集。
鞦韆の足蹴つとばす町ひとつ
小路路地京に涼風通ひかね
さはあれどよきこともありわれもかう
用足すも用のひとつや網代守
プーさんの瞳は釦はるうれひ
亡きひとは即かず離れずあたたかし
孑孑の国の詩文を真似るべく
横顔は正面なりきヨットの帆
たこ焼きの蛸は采の目西鶴忌
セーターを出づれば見ゆる波頭
梯子から御慶の降つてきたりけり
馬穴の中覗きてのちの懐手
紙風船やさしき息をバリバリと
抒情とは引掻傷よ夏つばめ
夏月と老母はぬつと立ちにけり
箱庭に手をさし入れて皺深し
読めねども楽譜美し熱帯魚
ベランダに夕焼一枚づつ配る
踏台に小窓ありけり文化の日
講堂の高き窓から高き空
唐辛子過去がどんどん若返る
鶴よりも航空便は高く飛び
ぼくと言ひ小生と書く花八ツ手
寒晴や尻尾で空を飛ぶ鯨
沢庵を持つ手のほかはみな自由
袖口から指の出てくる卵酒