《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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今井和子『句集 象と出会って』(あざみエージェント)より
2021.10.15
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2014年。
「びわこ番傘川柳」同人。第1句集。
俳句の句集と思って買ったら川柳でした。
本屋でも川柳の個人の句集はまず見かけないので。
それでも川柳好きですし、俳句としてもよいものもあったのでおもしろかったです。
うれしさを隠しきれないチューリップ
わっと叫んでひまわりに抱きついて
赤錆びた線路ごとんごとんと八月へ
掘り起こされたのは八月のわたし
見つめられふっと息する毒キノコ
鹿と話すと淋しさがうつる
想うこと重なる揺れている桜
父の描く赤い椿は母である
取り扱い注意と書いてある背中
台風になって時々父は訪れる
マネキンの裸なんでもないはだか
60色の鉛筆 この世からあの世
しぐれきて曲るところを間違える
旧姓で呼ばれタンポポ咲いている
ぴかぴかの廊下の先の雛祭り
終電車 枕の中を通りすぎ
ぬるっとしたりざらっとしたりして生きる
象の瞳の中でやさしくなっている
からっぽの心の中もこの世です
鳥になりたいいつもひらひらしてる紙
六月のみどり喋りたくなった
一日を私になってくれたシャツ