《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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辻桃子『句集 花』(牧羊社)より
2021.11.01
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昭和62。
「花」主宰。第3句集。
~「あとがき」より~
私にとって「俳句をつくる」ということは、「世界を新しくする」ことなのだ。すでに出来ている俳句的既成概念を一歩踏み出して、「ああ、、まだこんなに新鮮な世界があるのだ!」って、子供のように驚いていたい。
残り柿べたばた潰れ芭蕉庵
顔と顔くつつけてゐる鯰かな
涅槃図を見にゆけばもう仕舞はれし
死ぬるほど日焼恐るる女かな
目高すくふ折々乳房のぞかせて
月白の小口にゐたり聖書売
半纏の厚き薄きと売られをる
はつゆめを告げつつ笑ひころげをる
抱くごとく毛皮コートを脱がせやる
寒弾や電子音楽器(シンセサイザー)轟轟と
うつとりと燠となるなり春の炉に
フンといふ顔にて蟇の出づるなり
涼み茶屋乗るべき舟を見下ろして
団扇もてまたいふよこの湿つぽさ
半身は簾の内や昼寝人
糸蜻蛉ズボン濡るゝはさみしかり
ぼつぼつの痛きながなが胡瓜かな
簾せむと買つてきしまま巻きてある
棚を組みはじめし夜店なんの店