《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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奥村鷹尾『句集 朱雀春秋』(文學の森)より
2021.11.06
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平成20。
「京鹿子」同人。第1句集。
鞦韆や虹より高きとき得意
鹿走る朝霧の野の神代めく
四方の気を圧して泰山木ひらく
拾ひ進む木の実やなほも降る中に
ずしり冷たき書をとき蔵書刻印す
枯苑となりたる日々の作務無沙汰
孫生るる天底抜けの冬日和
今浦島めきて知己無き秋の宴
炎天を来て立ち昏むゴッホの絵
モンゴルの星座地の果まで夜涼
坪庭の十歩の雪をいとほしむ
みごもりて蟷螂斧を構へ得ず
梅一朶一朶万朶となり薫ず
藪からし枯れて枯れざる樹にまとふ
満堂に春呼ぶ廬舎那仏讃歌
老いまじく新玉の湯を溢れしむ
経涼し僧絢爛の衣を威とす
藪からし枯らし飽きたる己れ枯れ
鹿の子生るよろと立つ迄見てゐたり
矢車のからから嬰は夢に笑む
捕り損ねし毛虫を嘴に食み直す
花散り来いづくともなき高みより
昼顔の花は小ぶりの震へ癖