《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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渡辺政子『句集 修二会』(俳句アトラス)より
2021.11.13
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令和1。
「春耕」「晨」同人。第1句集。
北窓を開きミシンの油差す
新涼の森へ押しゆく乳母車
産み月の牛に大型扇風機
重文となりたる東司小鳥来る
打ち鳴らす鐘に修二会の火の粉とぶ
ひとときを水鉄砲の標的に
熱の子に白湯さましゐる大旦
牛の子に塩舐めさする夕薄暑
乳牛におからの届く寒露かな
冬の夜の魔女のとび出す子の絵本
樹木医の掌厚し小鳥来る
国学の大人(うし)の旧居や冬紅葉
囀の声入れ替はる楠大樹
水神も酒神もおはす穂懸かな
天河の風の涼しき能舞台
寒禽の中の一羽の声の鋭し
武の神に湯を奉る春隣
潮の香の糶場涼しき明石かな
灯の涼し小樽運河の倉庫群
金賞の金魚大きく尾を拡ぐ
寒禽の声の明るき禁猟区
星増ゆる名残の空となりにけり
歌垣でありしあたりの野に遊ぶ
たつぷりと水撒き朝の市を終ふ
空蝉の日毎に増ゆる一樹かな
初泣きの子をなだめゐる六歳児
大寒の汗光らせて墨を練る
遠足の子ら入れ替はる大仏殿