《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 | 日記 | 波戸岡旭『句集 父の島』((ふらんす堂)より

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《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記

波戸岡旭『句集 父の島』((ふらんす堂)より

2021.11.28



1989年。
「沖」同人。第1句集。

殺し場となる幕が開き蛙鳴く

芒野を行くやたやすく道生まれ

むんむんと吾子の匂ひの蒲團干す

島の母起きる時刻の冬の星

枯山のすぐふところに突き當る

まづ言葉あたためてをり朝焚火

蓬摘む吾子の故郷となる土手に

仕舞ふ時しばし向き合ふ女夫雛

ひとすぢに地の冷えのぼりさくら咲く

ふたすぢのちから等しきさくらんぼ

口紅をおとして妻もおぼろめく

春星や嬰ははじめてのなみだ溜め

流燈に浮く父の山母の山

花の奥一枝ふしぎな揺れ見せて

十本の指垂らし見る唐辛子

夜食とる大きな頭ばかりなり

水涸れし景とはしばし氣づかざる

端居して母似の叔父の聞き上手

聲がすぐ山にぶつかる柿の村

刃こぼれのやうな日が射す白牡丹

朝の日の斑の定まらず今年竹

學問のたそがれにゐる蟇

追憶に色あらばこの赤とんぼ

合格といふ實感のゆで卵

妻に客ありて書斎のさくらんぼ

端居してこの世を拗ねてゐるごとし

眞桑瓜食ぶむきだしの膝がしら

稲妻のとらへし山の巨いなる

湯豆腐のことことと情動くなり

膝送りして新涼の畳かな

人日の山より下りて来し男

箸にまづ水の固さの冷奴

竹林を出て鎌倉の冬めくや

友一人消え二人消え酒家おぼろ

引く波に靑よみがへる神渡し

啓蟄と書くより蟄のうごめきぬ

鶏頭のまともに立つてゐるふしぎ

冬三日月良寛さまの字に似たり

龜鳴くか高座の座布を裏返し

志ん生の霞に生きてゐし聲か

弓なりに考へてゐる今年竹

蘆刈りの入りし方より空亂る


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