《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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大輪靖宏『句集 月の道』(本阿弥書店)より
2021.12.28
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2019年。
「輪」主宰。上智句会代表。第5句集。
弥勒仏春を味はふ頬の指
駅の恋芽生え五月の通学路
水澄めば野に新たなる風生まる
燕去り豪農土間を閉ざしけり
紙漉きを守りて寡婦の腕太し
娘から他人行儀の年賀状
遠野なら河童も亀も鳴くだらう
老いたれど心に黴は許すまじ
園児には髭のなじまぬ聖夜劇
ささやかな用まだあれど日向ぼこ
決めし量酒呑み終へて夜は長し
自転車の灯火ちらちら来る寒夜
また逢ふを約せず別る年の暮
江戸明治知りて穏やか雛の顔
もう少し歩くつもりの花の雨
若葉山大正ガラスにゆがみけり
睡蓮の花の隙間に鯉の口
恋猫は見栄も誇りもなく叫ぶ