《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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清水余人『句集 香日向』(飯塚書店)より
2022.01.02
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令和2。
「田」編集長。第1句集。
単線の一駅ごとの桜かな
黄昏に人の溶けゆく寒さかな
夏掛や母たひらかに寝ておはす
睡蓮の池の明るき美術館
冬銀河笑顔で帰るために泣く
母撮らば遺影にせよと花の下
初日いま海離れむと歪みけり
母の家訪ねてしばし昼寝かな
雷鳴や虚空を摑む赤子の手
饂飩屋の隣に古墳うららけし
さくら見てやぎ見て帰る土手の道
武器に触るることなく老いて終戦日
軍港にカレーの香る秋日和
風邪ひきてよく風邪ひくと言はれけり
着膨れてみんなの山羊に草呉れる
寒卵割れば元気な黄身ふたつ
後円は土筆の国となりにけり
宛先のシールの束や初仕事
地に落ちて後の半生紅椿
敬老の日のGパンの真青なる
新米を囲みて二人ルビー婚
屋根に雪のせてドライブスルーまで
全身を伸ばしもの取る掘炬燵
野分過ぎ仕舞ひしものをまた並べ