《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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松原雅子『句集 紅枝垂』(本阿弥書店)より
2022.01.16
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1991年。
「草苑」「航標」「海流」同人。第1句集。
生国や藁の匂ひのつるし柿
オペラグラスを夫と互に初芝居
鶏小屋の敷藁かわく涅槃変
昼寝覚夢は五尺の母のこと
婚の荷の遠ざかりゆく袋掛
永き日の四時で止まりし大時計
帯締むる間に満月のあがりけり
きき酒は女ばかりや梅二月
太宰忌や白磁の皿に墨をとき
終戦日その朝のこと兄のこと
折箱につきし塩昆布夏芝居
倒木の蒼きを跨ぎ月夜茸
丹の橋を渡れば木の実しぐれかな
早春の船に持ち込むトルストイ
余り苗水ゆきわたる丹波かな
大土間の厨につづく夜の秋
地に秋の影となりたる藁庇
どんぶりを上り框に望の夜
象潟の荒濤盆の月濡らす
大いなる芭蕉を切つて卓布とす
雑巾を投げ交ふ寺の煤払
野ざらしの木椅子も花菜明りかな