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《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記

こんまり効果・語り部であること

2012.01.30

こんまりこと近藤麻理恵さんの片づけの話を、昨年末にこの日記で書いた。
おもしろいことに、昨日の買取依頼の2軒とも、彼女の本を読んで当店に連絡をしたとのこと。
お一人はこんまりさんを検索して当店のHPに辿り着いたとか。
こんまり効果と言っていいだろう。

これも不思議なことだが、依頼を頂く方に教員の方が結構おられる。
昨日のお一方もそうだった。
私自身が教育の世界に身を置いていたこともあり、おそらく教育書に関しては京都の古書店の中でもっとも知っていると思われる。
あえて教育書に特化しているわけではないのだが、なぜかそういうことが起こる。
自分が読んできた縁のある本も集まって来やすい。

車中でNHK-FMを流していた。
家でもクラシックの最近の情報を知るためにかけている。
伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」が井上道義の指揮でかかった。
伊福部はゴジラの作曲者でもあるから、似ている個所が来ると、ゴジラのテーマが頭に流れる。
井上さんの指揮は躍動感があり、見事な好演であった。


ラジオつながりで。
朝4時台に、これもNHK-FMを先日かけていた。
「東北の海に再び向き合う」というテーマで、民俗研究家の結城登美雄氏のお話。
こんな時間に誰がこういうものを聴くのだろうと思いながら聴いていた。
東北の人たちに話を聞き、それをラジオで伝えている。
「農業は金のことさえ考えなかったら、最高の仕事だ」といったような。
とにかく語り口が穏やかで味わいがある。
このときはっきり、民俗学というのは「語り部」の仕事なんだと感得した。

柳田國男の『遠野物語』の序文に、「国内の山村にして遠野よりさらに物深き所にはまた無数の山神山人の伝説あるべし。願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。」とある。
これは小林秀雄の講演で言及されていて知ったのだが、小林曰く、平地人とは都会人、インテリのことだと。
民俗学など、山村に暮らしている人にとっては必要ではない。
必要なのは自然から離れてしまった平地人なのである。
だからこそ、これを語りて戦慄せしめよと激しく言うのだろう。

結城氏も柳田も、自らを単なる語り部であろうとするが、それがいかに難しいものであるか。
そこには伝えたいものへの愛がなければならないし、そうでなければ平地人には伝わらない。
一種の翻訳でありながらそのエッセンスを伝えるという非常に困難な役割である。
ゆえに非常な感受性を必要とされる。

「語りつぐ愛に」という薬師丸ひろ子の歌がある。
http://www.youtube.com/watch?v=jZp3wIeE7ng (you tube)
「愛を語りつぐために みんな生まれる」という歌詞で、そういう思いは誰しもあろう。
各々が自らの立場で語りついでいくこと。
当店も微力ながら残していきたい本は残るようにしていきたいと思っている。
こんまりさんの「ときめく」ものは各家庭では置いておくべきものだが、店の立場、役割としてはそれは流通させなければならない。
売りたくない骨董屋なるものもあり、その気持ちはわからなくもないが、それでは駄目だろう。

ばらばらの話のようですべては一本につながる。

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