《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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髙崎武義『句集 榛』(本阿弥書店)より
2022.04.10
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1994年。
「狩」同人。第3句集。
雨を呼び雨に呼ばれて枝蛙
籐寝椅子きしませわれをとりもどす
釜の底鳴らす越前蟹の爪
寄鍋の火を消してより座の乱れ
網棚に一物もなし初電車
老鶯の声を重ねて二尊院
いなづまやおくれてうごく馬の耳
天高うして流木の頭をもたぐ
木の葉髪ひとすぢ徹夜稿の上
木枯や驢馬は大きな耳を伏せ
春雷やみじろげば鳴る鍵の束
榾に火の着くまで髭の顔上げず
雪捨てて雪国の川溢れさす
下萌えに積まれて袋売りの土
指笛を吹く野火くさき指咥へ
二頭立馬車より下りし春の夢
丈越されもう向日葵に近寄らず
書斎派の裏地を派手に冬羽織
湖凍る星の楔を打ちこまれ
十五夜の流木動く気配なし
海へ突き出す成人の日の岬
水中に芦の火柱立ち上がり
朝焼やゐたたまれずに鴉とぶ
送り火の煙のからむドアチェーン
生者には影の濃すぎて盆の月
濡らさじと書を脇挟み初しぐれ
膝毛布かけてこれよりわが時間