《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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山口超心鬼『句集 誓子星』(角川書店)より
2022.04.14
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平成8。
「鉾」主宰。第3句集。
明日は明日浮浪者今を日向ぼこ
葬を待つ河鹿の声に耳すまし
蜂を追ふ日頃使はぬ箒にて
墓に挿す供華に直ちに蜂が来る
眼に留めし福娘より笹を受く
花の灯が消えて一山真つ暗に
ちちろ鳴く城塁のどの隙間にて
天高し磴千段を上りつめ
那智を去る瞼に滝の落ちつづけ
真白の睡蓮ひらく爆心地
ベビーカー待たせて置きて墓洗ふ
天高し穂高連峰丈競べ
凍筒に供華を捻じこむ三鬼の墓
とぐろ巻く庭のホースが雪を被て
春星のいづれが誓子星ならむ
押し押され鉾の提灯見えて来し
咳きこみて読経を少し省かれし
流感の熱き乳房に乳溜まる
五輪の塔地より空まで苔の花
よろよろと月に近付く揚花火
古稀過ぎて一誌を興す雲の峰
月読の神今日の月見せ給へ
三成坐像病葉を膝に溜め
魚市場海月は踏まれ蹴飛ばされ