《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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浅井陽子『句集 狐火』(北溟社)より
2022.05.01
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平成14。
「運河」「晨」同人。第1句集。
膝揃へ直して子より御慶受く
金亀虫飛び映画ロケ撮り直す
岩を動かして半裂見せくれし
遭難の追悼といふ登山かな
石鯛の魚拓とりゐて墨足らず
どぶろくの瓶レッテルを貼りをらず
女正月家にひとりにして貰ふ
鳥巣箱岩に片足かけて掛く
田楽の味噌温めてゆるめけり
玉虫の色薄翅に及びゐず
ごり汁の上澄みに浮く目玉かな
剃髪の前夜の髪を洗ひけり
雪催鷲ヶ峰から鷹ヶ峰
人間に疲れ花には疲れざる
月祀る春日曼陀羅絵図を掛け
白絹で碁石を磨く小六月
毛糸編む文鳥の籠引き寄せて
進水の歓声蜜柑山にまで
図書館に一日籠る女正月
新聞を漏斗に種を収めけり
廊下まではね出し恋の歌かるた
囀れり韓国けふは見えざれど
蚊遣焚く一度は捨てし山に住み
サングラス外して鳥を見失ふ