《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
-
木田千女『句集 白炎』(本阿弥書店)より
2022.05.04
-
1998年。
「天塚」主宰。「狩」同人。第6句集。
ペン先で人めつた切りペン始
ひなあられ十粒添へられ患者食
夏場所や化粧まはしに星条旗
出目金を買うて龍宮城も買ふ
少年の獄舎に高き鯉のぼり
敬老といふ一番にいやな日よ
また逢ふを約してくれず蛙の夜
なにひとつ持たずに鶴の帰りけり
鳥曇この世あの世も絵そらごと
皿のものふるへどほしや川床涼み
鳥渡る恋の一句もなき子規よ
しぐるるやいもぼうの灯のほうと点く
善人の顔して挿しぬ赤い羽根
師に叛き父に叛きて木の葉髪
冬銀河来世はきつと男です
噓つきの口紅を濃く閻魔祭
幾万の顔の雲湧く原爆忌
鶴守の夢の中まで羽の音
飢餓地獄生き抜いてきし木の葉髪
牡丹鍋大志も恋もなく食らふ
日記買ふ白き月日の怖しや