《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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阿波野青畝『句集 春の鳶 改訂版』(白夜書房)より
2022.07.02
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昭和55。
「かつらぎ」主宰。第2句集。
お遍路の合掌ながく且つかたく
雲海に指の穴ほど日本海
彼処焼け此処のこる街卒業す
解夏の門斯くも大きく開かれし
北窓を開け父の顔母の顔
風花の我より君に逃ぐるあり
足音が固まつて来る寝釈迦かな
のびちぢみしてのびてゆく浪涼し
生身魂きざす涙を笑ひ草
夜学の師一語吃りて又一語
そぞろ行くここらが月の瓶原
しぐれつつ路傍の石も成仏す
投げし音耳に反りし慈善鍋
高き画架低き画架組むさくらんぼ
手に細り消えなん髪を洗ひけり
乾坤のしづかなるとき蚤がさす
駅暑しさがしさがされしてうろうろ
眦を波にしづめし河鹿かな
粧へる山のおもてに滝光り
魚は今鳥に似て若布(め)を過ぎゆきし
この清水錫杖洗ふ八百年
堂畳海のやうなる彼岸かな
矢の中に矢投げて厄を払ひけり