《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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鷲谷七菜子『句集 天鼓』(角川書店)より
2022.09.01
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平成3。
「南風」主宰。第5句集。
きたきつねたちまちけぶり樹氷林
喉ふかきところよりこゑ桜守
色鳥のあとかたもなし白磧
鹿の子のひとりあるきに草の雨
須弥壇のちりもとどめぬ大暑かな
秋風に神馬が放つ鼻ぶるひ
春眠の顔なきがらとなりにけり
きさらぎの人に死なれし顔洗ふ
竹の皮こぼれてきたる高さかな
読みさしの栞いく日秋の蝉
爽涼の一餉の箸を置きにけり
灯を消してよりありありと初昔
白梅に風のはなれぬ日暮かな
年明くる鳥の高音が夢に入り
一塊となるや飛雪の残り鴨
さしかかる祖谷に立ちたる大幟
筒鳥や一山杳と奥知れぬ
手を置いて髪のぬくしや祭の子
まつたくの雨中真青の田いちまい
激しさのかたまり落つる女瀧かな