《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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島田刀根夫『句集 青春』(邑書林)より
2022.09.10
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平成19。
無所属。第3句集。
櫻蕊掃いて新任教師かな
教師立ちあがりみな立つ花野かな
寒紅のひとりひとりに鏡あり
おでん屋のおやぢなかなか學ありて
亂すまじいま翡翠の水なれば
神官を涼しくしたる袴かな
防人を立たせし磯に遊びけり
鳥威いま風のほかなにもなく
目の見えぬ人黄落の音のなか
子を濱にのこして海女の霞みけり
老鶯に近づいて海遠ざかる
仕事なき日はたゞ歩く源五郎
かたちよき石に日傘のまゝ坐る
黄の帶の岩波文庫夜の秋
首あげて風にさからふ蜥蜴かな
牛飼の椅子に螇蚸のあつまれる
落葉籠小さく庭にふさはしく
印度僧片肌脱ぎに瀧の前
子の脱ぎし靴を手に草芳しき
草涼し草刈る人を遠く見て
弟子ひとり持たぬ僧なり蠅叩
鉾立のもの言はず息そろひけり