《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
日々野さき枝『句集 天馬』(狩俳句会)より
2022.09.16
-
平成8。
「狩」「達矢」同人。
薄氷を踏みしだきつつ測量士
流れ寄るもの増やしつつ水温む
日も風も弾き返して花辛夷
穭田に突き立てられし売地札
遠山に日の退きて田草取
まだ恋を知らぬ指さき桜餅
白木蓮や鉄扉を閉ざす修道院
住職の背筋正して毛虫焼く
雲の影どつかと坐り山眠る
竹皮を脱ぐに器用と不器用と
飛ばされて鳥にはなれぬ夏帽子
丹念に読み返しつつ文曝す
密ならず粗ならず土手の花芒
指さきに覚えなき傷そぞろ寒
着ぶくれや骨折の腕吊りしまま
さりげなく縁談頼み桜餅
大樹より天守へ移り鳥の恋
胸うすきこと母ゆづり夢二の忌
天上も天下も乾き麦の秋
見るものを違へて夫と夕端居
行く気なき方へと誘ひ道をしへ
落ちてすぐ滝になじみて滝の水
土拡げ土の香ひろげ耕せる
海に出るまでは乱れず鰯雲
星々にあたり散らして虎落笛
体重のゆゑなく減りて鳥雲に
どぶ板の一枚はづれ一葉忌
裂帛の気合ひを封じ滝凍る