《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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小林たけし『句集 鹿』(狩俳句会)より
2022.10.15
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平成8。
「狩」「朱雀」同人。
白鳥を守るごとくに鴨の陣
白鳥を遠く見てをり襟立てて
海よりの風にもどされ揚羽蝶
飴玉で頬ふくらませ祭の子
白蓮の花ふくらます風の出て
震度一ありし夜の明け地虫出づ
蝮注意落石注意山開き
滝壷を出てせせらぎにまだなれず
病弱のゆゑに永らへ生身魂
人の顔まん丸となり豊の秋
滝仰ぎ来てしばらくは人嫌ひ
思はざる人に会ひたる涼しさよ
踏切を渡りてすぐの草いきれ
船虫のしめし合はせたやうに逃げ
草虱まみれのボール拾ひの子
薫風や聖者のごとき顔の山羊
白扇をもて敵のごと指されたる
笑窪にはひとつおまけの天瓜粉
行き過ぎてふりかへるとき帰り花
心にも無きことを言ひ息白し
死にたくも生きたくもなし冬の蝶
風のせゐばかりといへず桜散る
遊んではもらへぬ母へ草矢打つ
春宵や宿下駄すべて出はらひて
ポケットの鍵をまさぐる寒さかな
一本の杭を争ひ百合鷗
狸なと狐なと出よ月見草
鳴き出してすぐに正調つくつくし