《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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阿波野青畝『句集 紅葉の賀』(かつらぎ発行所)より
2022.11.26
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昭和37。
第4句集。
開帳や大きな頬の観世音
牡丹百二百三百門一つ
端居して太閤の覇を思ひけり
蓮破る雨に力の加はりて
馬酔木野やかしこ法相ここ華厳
個展見るオーバーの客立ち塞ぐ
鬼は外主はなかなか帰宅せず
わが袖に君が袖にと馬酔木ゆれ
人違ひされ親しまれ花篝
みよしののみやまつつじの中の瀧
燈にかざし鹿の透きたる奈良団扇
土用鰻店ぢゆう水を流しをり
曼殊沙華佛は首(かうべ)失はれ
猿酒かかんばせを打つ滴あり
さ山吹ところどころに濃山吹
ひとの陰(ほと)玉とぞしづむ初湯かな
樂茶碗作る手を蚊の刺しにくる
手の平にひたひをささへ暑に耐ふる
吹き拂ふうすばかげろふ聖書讀む