《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
渡部有紀子『句集 山羊の乳』(北辰社)より
2023.01.08
-
令和4。 「天為」同人。第1句集。
人日の赤子に手相らしきもの
夜店の灯にはかに玩具走りだす
秋ともし飛べない鳥の飛出す本
千本の影を整へ針祀る
聖夜劇天に吊りたる星あまた
卒業歌前のみを向き立尽くす
行く春や餡の重たき中華菓子
大利根の光も容れて袋掛
二階より既に水着の子が来る
月蝕を蜜柑二つで説明す
飛込みし鳥の重さや花万朶
ゆつくりと指揮棒を振り春惜しむ
朝焼や桶の底打つ山羊の乳
落椿丸ごと朽ちてゆく時間
蒼天の剝落として初燕
落書のラッカー真つ赤春疾風
泥鰌鍋鴨居に雷除の札
噴水の天辺砕けまた砕け
衣を裁つ鋏重たき夜の秋
八月の折紙の裏みな真白