《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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宇都宮敬子『句集 琴弾鳥』(ウエップ)より
2023.01.14
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2020年。
「鴫」「貂」同人。
第2句集。
曹達水シュワッと何か失へり
大皿の模様のやうに舌鮃
鎧ひたる騎士の風格夏館
踏んで脱ぐ水着に草の匂ひかな
隣国の文字まだ読めず冬銀河
数へ日や本は書棚を出でしまま
踏み入りて明日のやうな雪の原
船虫の散りて亀の手残りけり
充電のやうに幹抱く秋の蝉
秋蝶の空気抜くごと羽たたむ
寒芹に抜身のやうな水流る
釣舟の幅に薄氷開きけり
料峭の嘴に跳ねたる銀の魚
嘴太き鶯餅でありにけり
カピバラを撫でて勤労感謝の日
風光る餌台に鳥入れ替はり
夏野菜の色にふくらむレジ袋
飽きられてたらり水吐く水鉄砲
「カレーの市民」めく一塊の枯芭蕉
透明な赤児のよだれ雪解風
靴の砂海に戻して夏惜しむ
倒木の長さに積もる春の雪
振舞のとん汁に降る春の雪
永き日の終りを弥勒仏と居り
花粉症かと門衛を見て過ぎる
衣更へて踝太き修道女
太陽の色なり薔薇の名はサンバ