《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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黛まどか『句集 花ごろも』(PHP)より
2023.01.15
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1997年。
「月刊ヘップバーン」代表。
春の波恋に引き際ありにけり
初蝶の消えたるあたり草匂ふ
湖の面のひと揺れに発つ花筏
花冷のくちびるをもて黙らさる
芹摘の帰る帰ると言ひながら
バレンタインデーカクテルは傘さして
もう声のとどかぬ船や春日傘
土筆出ていきなり大き山に会ふ
青き踏む好きになること止めたくて
また同じタイプに夢中万愚節
みほとけのやうに抱かれて花の雨
春一番あしたの私連れてくる
船長はいつも後ろ手鳥雲に
東京の顔で戻りし盆休
巻貝の渦より貰ふ愁思かな
君を想へば気まぐれに飛ぶ星よ
大粒の雨落しけり星の恋
流星や行方知れずの恋をして
秋風のこんなところで抱き寄する
息白く真赤な嘘を吐きにけり
鞄開けるだけボロ市の店開き
冬銀河逢ひたいときは逢へないとき
冬の雷うづめたき胸ひとつあり
ホットチョコ知らぬで通すまつりごと
毛糸編む子を宿すとはどんなこと
ジョギングが行き猫が行き松飾
サーファーの波を見にくる三日かな
久女忌の空に瑕瑾のなかりけり