《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
伊藤多恵子『句集 二言』(本阿弥書店)より
2023.02.09
-
2012年。
「泉」同人。第2句集。
先頭に嬰抱いてくる賀客かな
笹鳴へ夫は眼鏡をはづしけり
捨てたしと思ふ雛の恐ろしき
鱏の来て秋扇はたと止みにけり
溝蕎麦の動かぬ水の流れけり
粧ふ山眠れる山を帰りけり
夜空青くて花片の舞ひにけり
階段のパンジー黄色にて終る
立つも声坐るも声や石蕗の花
きさらぎの一枚岩が川底に
リュック一つ置かるる雀隠れかな
それぞれの椅子に無言や昼の虫
板の間の夫のごろ寝や終戦日
夜の稲妻障子破れてをりにけり
この池の姫の話に蝶生る
牡丹開く一枚づつの力かな
坂半ばまで送りけり夕桜
後ろ手をつけば実梅の残りをり
一献のただそれだけの望の月
乙女らの鎖骨八十八夜かな
一人より二人が寂し秋の蝉