《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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岸田稚魚『句集 花盗人』(立風書房)より
2023.02.20
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昭和61。
「琅玕」主宰。第6句集。
初雲雀なりやと腰を浮かしたる
母の日の母きよの名のまたはるか
雹跳ねてをりその他の音のなし
終戦日といふ一日を人のみな
陽炎の中にわがをり城消えて
居酒屋の扉が開いてゐて春の月
烏瓜三つほどが見えあとは暮れ
師走選挙投票所杖倒れたる
大寒や巌に雪の食ひ込んで
雪の夜や一灯あれば夫婦寄り
転倒す雪の教会前にして
笑ひごゑ消えしあたりに春茸(はるご)かな
風の出て浮きあがりたるさくらかな
夕鶴の風に対ひて高あるき
引き際の月下の鶴となりてゐし
豆撒きの済みたる家に戻りけり
ナイターの危ふき空の恃まるる
秋の蚊を打ちてひびかすお寺かな
一枚は日の当りたる秋簾
街の灯のかたまり動く寒さかな
さむざむと見て水の上の日向かな