《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
福田千代子『句集 表裏一体』(文學の森)より
2023.03.03
-
令和5。
「築港」「玉梓」同人。第1句集。
青春の坩堝となりしキャンプ場
塩鮭の口より塩のこぼれをり
植木市土の匂ひを買ひにけり
木下闇並ぶ木曽塚巴塚
秋桜女らしさは死語となり
凍滝のどこかに水の音したる
一湾の落暉に染まる牡蠣筏
懸想文目でもの言うて売られをり
残り火のなかなか消えず大文字
音を消し色を消したる雪の余呉
見て触れて日毎確かむ吊し柿
扇風機こきこきこきと半世紀
炎天にぶつかり回る観覧車
太陽がいつぱいヨット乱反射
参道に机ひとつの焼き栗屋
げんげ田に影といふものなかりけり
遊船のどこから見ても富士は富士
花冷や母の言ひ分子の言ひ分
黒髪を束ね無口の受験の子
蒼天へ百の木蓮白炎す
補虫網弥生遺跡へ走り出す
見返りのかんざし揺るる七五三