《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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乕谷芳子『句集 氷室の桜』(文學の森)より
2023.04.06
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平成25。
「運河」同人。第1句集。
踊笠取れば涼しき目鼻立ち
抜刀の勇は土足菊人形
梅固し梅まつりの旗立ちたれど
白塗の楽屋まる見え村芝居
漁に出てゐたる舟屋に日脚伸ぶ
春愁や月光菩薩目蓋ふせ
轟ける瀑布に手摺持ち直す
黒米の稲穂を供へ一の酉
旅に出て歯痛をさまる三鬼の忌
近衛兵たりしが誇り生身魂
寒さうな脚の降り来る箱階段
深吉野の山犇めけり薬喰
懸想文売が榾火に背を焙る
栗の花土葬の土のやや凹み
大漁旗木に木に立てて海開き
二抱へある梁の蔵涼し
春の月山吹色に昇りけり
昆虫館夏期講習のはじまれり
海女小屋のピンで止めたる潮暦
粽結ふ藺草短きことぼやき
臍出して少女が闊歩日雷
狩解禁昂ぶる犬ののんど撫づ
白障子光を集め二月堂