《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
瀬島酒望『句集 葷酒庵』(ウエップ)より
2023.04.15
-
2019年。
「やぶれ傘」同人。第3句集。
わんわんと水子地蔵に蝉時雨
子に渡す父の揚げたる凧の糸
蝶風に逆らふやうな乗るやうな
気にすれば気になる音や冷蔵庫
風鈴の舌に大それたる言葉
靴先に冬日の当る電車かな
春眠やバス誘導の笛の音
手花火に照らされてゐる鼻緒かな
小春日や紙飛行機を投げ返す
五月晴れぶらりと入る古本屋
捲るには惜しき表紙や新暦
冷や麦やテレビの横に招き猫
日除けより売り声掛ける佃煮屋
侘助の落花そのまま休診日
凧と凧離ればなれになりにけり
水仙や母校は今も男子校
月の宿薙刀掛かる長押かな
配偶者無しと書き込む夜長かな
麦踏みのひと遠目にも小柄なる
夏草の隠す古道へ曲がりけり
納豆の辛子手につく朝曇
門番も菊人形でありにけり
もぐら塚かも花屑の膨らみは
田植ゑ機の運転席に野球帽
陽炎や金の成る木に水を遣り
凭るると傾ぐ板塀次郎柿
ポシェットを小脇に桜餅つまむ
秋暑し教授は頭蓋骨を手に
小手鞠やどちらからともつかぬ風