《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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橋本喜夫『句集 潜伏期』(書肆アルス)より
2023.04.18
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令和2。
「雪華」主宰。第二句集。
窓枠に嵌め殺されてゐる無月
死にたれば水のあかるき金魚玉
白障子神を見しものなかりけり
生きものはなべて孤独死梅ひらく
春愁や鳩は時計にひきこまる
春愁がブラックバスのごとくゐる
春暁や運河のやうに眠るひと
こころとは顔のなきもの心太
地吹雪や泪はつひに地に触れず
卒業や雪になりそこねたる雨
初桜けふを選んで咲きにけり
水温みゆく二心房二心室
来ぬひとを故人と思ふ桜かな
咲きのぼるごとくに止める春の雪
花嵐わが跛(あしなへ)を歩ましむ
時雨とは父の火葬を待つ時間
成人の日のぼこぼこのアルミ缶
妻のなき西日の卓となりにけり
食べられぬ妻に新米すすめたる
天生ののちのしづけさ雪うさぎ
黙祷の間も噴水の立ち上がる