《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 | 日記 | 『金子敦句集 現代俳句文庫88』(ふらんす堂)より

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《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記

『金子敦句集 現代俳句文庫88』(ふらんす堂)より

2023.05.10



2023年。
「出航」同人。

聖夜なり伝言板の感嘆符

鳩発ちて道あらはるる初詣

コピーまだ終はらず虹の薄れゆく

黙読のまなこの動く春の雪

もう来ないかもマフラーを巻き直す

猫の尾のしなやかに月打ちにけり

落花浴ぶ明日ふらんすへ行く人と

パレットに通す親指新樹光

青空の傾いてゐるかたつむり

補虫網にきれいな小石入れて来し

端居して付録のごとくゐたりけり

夕焼やきのふのやうな少年期

鉄棒に新緑細く映りけり

月光のかけらのやうな竹落葉

風ばかり捕まへてゐる補虫網

いつせいに楽譜を開く聖夜かな

如月のざらめびつしりリーフパイ

春愁のたとへば0で割るごとし

かき氷ひかりをこぼしつつ運ぶ

ガムテープ使ひきつたる西日かな

彫刻のごとくゼリーを削りけり

少しづつ粘土が象になる日永

空深きよりぶらんこの戻り来る

白息のはみ出してゐるかくれんぼ

眼鏡置くごとくに山の眠りけり

しやぼん玉弾けて僕がゐなくなる

月光がピアノの蓋を開けたがる

カステラの黄の弾力に春立ちぬ

それはもう大きな栗のモンブラン

卒園の子が覗きこむ兎小屋

大いなる果実のやうな初日の出

うぐひすや半紙の帯の濃紫

太陽より大きく描かれチューリップ

噴水はまこと大きな感嘆符

夏休み粘土はどんな形にも

菜箸は糸で繋がれ星祭

鳥雲に入るや一度も振り向かず

水底の団栗はもう転がらず

春を待つ八分音符に小さき羽

巣箱より出づる音符のやうな鳥

ゆく春やとろんとろんのオムライス

ビー玉の中の怒涛や鳥渡る

ランナーの肘の直角風光る

ストローの蛇腹ぐいんと海開き

可愛いと言はれ可愛くなる子猫

独り占めか一人ぼつちか大花野

月光を拒んでゐたる獣道

初空へ龍のかたちの波しぶき

抱き上げて子猫こんなに軽いとは

ドーナツも薬のひとつ春の風邪

ひぐらしや今日の余りのやうな風

セーターの胸にトナカイ行進す

さよならのらが白息となつてしまふ

馬小屋の藁は本物聖夜劇

湯豆腐の自らリズム取りはじむ

でで虫はしろがねいろの全音符

ゴージャスな指輪の並ぶ夜店かな

ひざまづき挿してもらひぬ赤い羽根

おのづから水葬となる海月かな

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