《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
宇多喜代子『句集 半島』(冬青社)より
2023.06.03
-
1988年。第3句集。
石の家月光深きところまで
梟に熟睡のときのついに来ず
天に月地にありふれた流離譚
まつろわぬ者として負う花衣
長汀は死魚点々と夏の暮
長病みの手首は秋を知りつくし
逝く夏や芸人の大足をみて
かくまでに人をへだてて蒼鷹
ひえびえと来るものを知る黒髪(かみ)の芯
日盛りを長方形の箱がくる
半身は夢半身は雪の中
心臓を押さえた形に冬の蝶
梟を見にゆき一人帰り来ず