《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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山崎秋穂『句集 満目』(牧羊社)より
2023.08.14
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平成3。
「南風」同人
第3句集
空蝉にのこるひかりの茶色の眼
こゑのあと音の澄みゐて松手入
そのまはりをぐらく涅槃し給へり
警策のいろなき風にひびかせぬ
落葉駆ける地上一寸夕あかり
しはぶきのひとつ此岸に初法会
漆黒の土間に降り込む春の雪
雛の灯眠気大事にねむりけり
噴水のいきなり高し原爆忌
行くほどに霧濃くほとけ立ち給ふ
ばらばらに整ふ礎石秋の風
瀬田川は大湖をしぼり雁わたる
そのいろの土となりつつ落葉みち
絶壁に水仙根づく怒涛かな
二人子に子がふたりづつさくらんぼ
目覚めゐて天井高しほととぎす
夕端居父のおほきなかげにゐし
鵜飼終ふくらくおほきく嵐山
ひとの死におのが死かさね寒夕焼
子も孫も島出てしまひ灸花