《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
大石悦子『句集 百花』(角川書店)より
2023.08.30
-
平成9
「鶴」同人
第3句集
祭馬涼しき木蔭もらひけり
海抜を訊きて涼しくなりにけり
葛切に家居の腹の出来にけり
訊かれたることに答へず真菰刈
眼の力曼殊沙華にて使ひきる
枯山が日ごと枯山らしく見ゆ
きのふ恋ひけふ憂かりける花茨
袖口をひろらに安居したまへり
伊勢道の拳のやうな蓬餅
病院のかへりをあそび獺祭忌
ポケットに木の実ポシェットにも木の実
蹤いてくる鹿に一瞥春日巫女
角立てて待春の加賀金平糖
うまさうに炒つてあるなり鬼の豆
涅槃図を捲ける難儀に来合はせし
沢瀉の水に手入るるわれもわれも
押せば押しかへす子鹿の額(ぬか)力
癌術後五たびの年酒受けにけり
フオーレ聴く月下美人と二人して
懐にかさばる懸想文二つ
避暑の荷に加ふる白洲正子かな
小鳥くる木仏の肌光(て)りたまひ