《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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橋本美代子『句集 七星』(本阿弥書店)より
2023.09.17
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1998年
「天狼」同人 「七曜」主宰
第3句集
胸の手が鉛の重さ昼寝覚め
遊船の波うけ島の子が泳ぐ
白毫寺磴のつづきにうろこ雲
騙されてゐよう日の中雪が降る
残雪を伽藍の蔭にのみ許す
悲しき眼鵜匠亡き鵜の緑眼は
葛あらし生家壊せしあともなし
この玻璃を頼む稲妻また稲妻
大蓮田われには見えぬ花もあり
新幹線雪に盲ひしところ過ぐ
涅槃図へいざなふ坊の緋毛氈
花の雨走つて走つて花の下
星空に帽子一振り螢獲る
鳴き出してわれもわれもと夕蜩
百万石手入れ一人は地に跼み
太陽の目潰しに会ふ昼花火
爆ぜるまで火色一筋揚花火
寝袋の天に序章の流れ星
先に行く夫を奪ふ芒原
投函す白夜の国の黄のポスト
長距離バス花野に降ろしてはくれぬ
凍るまで奥能登の滝海へ落つ
落椿さつき傍観いま凝視
聖夜劇天使マイクで終り告ぐ
誓子逝き襲ひ来るごと桜咲く
師は荼毘に吾は家路に朧月